(500)文字のレビュー『海底47m』★★★「海底が濁っているという当然なのに見過ごされてきた恐怖設定を存分に活かした快作」

『海底47m』(47 Meters Down)★★★

「海底は闇」という当たり前のようでいてなかなか描かれることのなかった設定を、当然のようにホラー映画としてキチンと利用したサメの恐怖シーンの凄味。

『ジョーズ』で人生を変えられた人間としては、「真面目なサメ映画」は観ておかなければいけないという義務があります。近年のふざけたサメブーム(いや、アレはアレで否定はしませんが)には若干モヤモヤしているわけですが、去年の『ロスト・バケーション』以降、「サメは恐いんだ!」という極めて真面目なアプローチの作品が今年も登場したことが大変嬉しい。

さて、極めつけにナイスな邦題の通り(原題のまま)、この作品は

「事故でサメのウヨウヨいる海底47mに閉じ込められた姉妹のサバイバル」

という完璧な一行プロット。

序盤こそチンタラしたドラマが若干あるが、状況説明が済むやいなやあっと言う間に姉妹の入ったケージのケーブルが切れて海底47メートルに沈降してしまう。

そこからは正にノンストップでのサバイバルが展開されるという、タイトルに偽りがまるでない快作。

そもそもこの作品が革新的なところは、海底が「殆ど真っ暗」そして「海底の沈殿物が舞い上がって視界が殆ど無い」というところ。

加えて当然、酸素のリミットもある上に、深海モノならお馴染みである「減圧をしないといけないので、急激な浮上は命の危険がある」という凶悪な自然の設定も牙を向いてくる。

つまり、21世紀を代表する傑作『ゼロ・グラビティ』同様、「絶対に人間が踏み入れるべきではない世界」を舞台にしているわけですよ。

そして、『ゼロ・グラビティ』で恐怖をもたらすデブリの群れに代わって、こちらでは当然「サメ」!!

さらにこの映画が秀逸なのは、「暗闇」をキチンと利用したホラー映画として作っている事。

実際問題ここまで「サメ」が怖い映画も珍しい。低予算なことは明白なのに、視界が殆どない海底の闇の中からヌっと姿を表すサメのビジュアルイフェクトは目を見張るものがあり、何度も度肝を抜かれる羽目に。

中でも終盤の照明灯を使ったサスペンスでの、すごいタイミングで姿を表すサメには正直心臓が止まる事請け合い。

また、海底の恐怖として外せない「底なし」という恐怖もちゃんと用意してあって、この監督への信頼感は非常に高くなる。

終盤の展開が『ディセント』を意識したようだがあまり上手く行っていないあたりなど、ちょこちょこと「もったいない」部分もあるにはある。ただ、それを帳消しにするにあまりあるプロットの素晴らしさと、それを活かしたサスペンスの波状攻撃は一見の価値あり。

しかも、ついさっき入った続編のニュースによれば、なんとタイトルを「海底48m」にするという、「まだ、そんな手があったか!」と映画の未来を明るく照らすようなアイデアに舌を巻いた。それも、舞台を「海底洞窟」にするという。ぬうう、とことん凶悪な設定を思いつくもんだ。

【90分/シネマスコープ・サイズ/2Kマスター/字幕版】

「サメ映画」の金字塔であるばかりか、映画の歴史を見渡してもここまで面白い映画は滅多にお目にかかれない正真正銘の傑作。

21世紀最高の映画の一本。短い上映時間の中で、アクションを通じてドラマをみせる近代映画文法の嚆矢であり到達点。

こちらも「真面目なサメ映画」の快作。浜辺まで数メートルという岩場に取り残された主人公がサメのせいで逃げ場がなくなるという設定が秀逸。しかも、終始怪我をしたカモメが一緒にいるという作劇の余裕も見逃せない逸品。

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