(500)文字のレビュー『エイリアン:コヴェナント』★★1/2「ミヒャエル・ファスベンダー大盛り定食二杯目無料」

『エイリアン:コヴェナント』(Alien: Covenant)★★1/2

休業宣言詐欺もはだはだしい、文字通り八面六臂の大活躍をみせてくれるファスベンダー。ゆめの町ファスベンダー・ランドへようこそ。

あなたがミヒャエル・ファスベンダーのファンならぜひこの作品をオススメしたい。そして、ミヒャエル・ファスベンダーの大ファンのあなた、絶対に観ておくべきだ。

『イングロリアス・バスターズ』によって我々の前に颯爽と現れた「3」を数え損なう男ミヒャエル・ファスベンダー。たった数年でその顔を観ない年は無いと言ってもいいような売れっ子スターになってしまった。

本人も「ワーカーホリックだから仕事を制限する」とか言っているようだが、現在ソレは寝言の域を出ないようで、相も変わらず多数の作品に出演しているし、これからも多数の作品に出演予定がつまっている。

そんな、ミヒャエル・ファスベンダーが、似合っているんだかなんなのか分からない金髪頭でアンドロイドを演じたリドリー・スコット監督作品『プロメテウス』は、個人的にそのミヒャエル・ファスベンダーしか見どころがないような凡作だった(訂正:自動医療装置による悪夢の帝王切開シーンも含めよう)。今回それから5年が経ち、再びリドリー・スコットが手がけた続編である本作は、「前作の良いところを伸ばす」という極めてポジティブ(反省の色のない)な作品に仕上がっていた。

つまり、【定食屋ファスベンダー】と暖簾に書いてあるのに、「おいおい、メニューがマイケル・ファスベンダーとミヒャエル・ファスベンダーしかねえじゃねえか」と文句をいうのはお門違いということである。

ちゃんとメニューの裏には手書きの汚い字で「ぎーがー」とか「じぇりー」とか「ふらんこ(あかでみーしょうしかいしゃ)」とか書いてあるのだが、それはメニューの裏をちゃんと見ないそちらの責任である。

とはいえ、いや、だからこそ、

この作品のファスベンダーは「長髪ファスベンダー」「ロボットファスベンダー」「片腕ファスベンダー」「笛吹ファスベンダー」「格闘ファスベンダー」「BLファスベンダー」「おえっファスベンダー」などなど、メニューにみっちりと各種ファスベンダーが勢揃いなのだ。

何しろ【定食屋ファスベンダー】を名乗っているのだから当然である。

事程左様に、今作のファスベンダー定食を一人で堪能するのは土台無理がある。宇宙に存在するファスベンダーファンをすべて満足させようという店主リドリーの熱意は、ほとんど同じ時期に公開される『ブレードランナー2049』と調味料を混同しているんじゃないのかとすら思えるほどだ。「ハリソンは折れたかもしれないが、俺は折れた憶えはない」という偏屈親父の意趣返しすら感じるほどだ。

余談だが、リドリーもすでに80歳である。もし万が一いつもの真顔で作っていても、頭の中は「あれ? おれ今なに作ってるんだっけ?」となっている可能性だって高いのである。恐らく全クルーの中でも飛び抜けて最年長であることは疑いようがないわけで、彼がおかしなことをしていても誰も文句など言えるはずもない。

我々はもしかしたらリドリーが作った『ブレードランナー』の本当の続編を観せられていたのかもしれない。

なので、我々はこう答えるしか無い。

「ファスベンダーは2人で十分ですよ! 分かってくださいよ!!」

と。

【122分/シネマスコープ・サイズ/2K/吹替版】

今回吹替版で鑑賞しましたが、『プロメテウス』と同様宮本充氏がアンドロイド演技を当然二人分やり、その微妙な差異をキチンと演じ分けていて素晴らしかったです。今回はタレント吹替もなくキャスト全員が素晴らしい吹替をなさっていて大満足でした。

海外ではすでにパッケージが発売中。

ジェリー・ゴールドスミスの1作目のメロディを多数配置し、オマージュをささげるフリをして、リドリーが長生きした人間の特権とばかりに1作目の「口論は俺の勝ち」だと言っているような感じでしたねw オリジナル・スコアは結構良かったと思います。

リドリーの『エイリアン』と『プロメテウス』も入っており、しかも『エイリアン』は日本語吹替完全収録の【吹替の帝王】と同ディスク。そして、むちゃくちゃ面白いメイキングも収録されている現状で最高のセット。

言わずと知れたリドリー・スコットが映画史に残したもう一つのマイル・ストーン。よく考えたらその後のジャンル映画に決定的な影響を残した映画を二本も立て続けに撮っているだけでも足を向けて眠れないハズなのに、みんなソレをわかった上で気にせず足を向けて寝てしまうのがリドリーの魅力でもある。

年長監督らしく近年は歪で個性的な作品ばかりを手がけているリドリーが、突然「普通」に最高の傑作を作ったのが本作。まごうこと無くリドリー・スコットの映画に仕上がっていながら、これだけちゃんとした映画作れたんだと、79歳になって我々を驚かせた名作。

初見時はリドリーの「俺だって『プライベート・ライアン』みたいなの作りたい」という手塚治虫イズムあふれる対抗意識が鼻についたが、何度も観ているうちに結局リドリー・スコットの映画なんだということが理解され、ほとんどカルト化している傑作。2時間以上ずっと戦闘シーンが続くという滅多にお目にかかれない異常作。

個人的にリドリーの映画では5本の指に入る大好きな作品。言うまでもないが現在流通している「ディレクターズ・カット版」がベスト。そして、国内ブルーレイよりもAmazonビデオで配信されている方がリマスター版なのでおすすめ。

リアルタイムに製作時と青春時代がシンクロしているので、リドリー・スコット作品の中では最も思い出深い作品。ハンス・ジマーの音楽も燃えた。

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