(500)文字のレビュー『美女と野獣』★★★※CULT「アラン・メンケンの音楽は条件反射で感動してしまう」

『美女と野獣』(Beauty and the Beast)★★★※CULT

その後のアニメーションの歴史を文字通り刷新するきっかけとなった「シャンデリアを回り込むCGショット」を敢えて封印したプライドあふれるダンスシーン。

1991年というと(個人的に疑わしいですが)すでに26年も前になるようです。『リトル・マーメイド』から始まったディズニー・アニメ第二黄金期ですが、続く『ビアンカの冒険ゴールデン・イーグルを救え!』(こちらも傑作)を経て、ついに今作のオリジナルとなる『美女と野獣』にて、アニメーションとして初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされるまでになりました。その後の名作傑作の連続は説明の必要はありませんが、それを差し引いてもこちらの『美女と野獣』の知名度は他の作品と比べても群を抜いて高いように思われます。そんな『美女と野獣』がエマ・ワトソン主演で実写化されました。

恥ずかしながら1991年当時、アニメが大好きだったのにも関わらず、ついつい「でも、アニメだろ?」という自分でもどうしてそう思ってしまうの理解に苦しむ色眼鏡を持っていました。なので、この『美女と野獣』を観たときも「うそだろ!?」と心底感動している自分にびっくりしたものです。

今回の実写化でも、どういうわけか「でも、結局ただの実写化でしょ?」とこれまた意味不明に上から目線で臨んでしまいました。結果、「うそだろ!?」と26年前と同じように大感動してしまいました。まあ、要するにまったく成長していないということでもあるのですが、多少なりとも言い訳させていただくと、あのアラン・メンケン作曲のメロディがディズニーのロゴが終わったところから流れてくるだけで(アニメ版と同じ!!)、26年前と同じように感動してしまって、一気に作品に引き込まれてました。つまり、アラン・メンケンがいけないんだ!!

日本のアニメに慣れている日本人には、ディズニーのプリンセスは「どこが可愛いんだ?」と思わずにはいられないのですが、今回のエマ・ワトソンときたら、日本人の感性からしても「めっちゃ可愛いじゃないの!」となるわけですから、ある意味オリジナルを超えているとも言えるわけですね。もちろんアニメ版のアニメならではのエモーショナルさや楽しさや暖かさなどは比較しても仕方ない部分で良いわけですけどね。

加えてわたしが今回の鑑賞で驚かされたのは、キャストのことをエマ・ワトソンしか知らなかったことです。特に秘密にしていたのか、わたしがただ単に知らなかっただけなのかは分からないのですが。おじいさんを演じているのが懐かしのケヴィン・クラインというだけでなく、あのアンティークに変えられてしまった使用人たちの正体がいよいよ明かされるクライマックス。次々と現れる超豪華キャストに度肝抜かれてしまい、図らずも「肉体を持つ役者さんの力ってのはやはり何か特別なものがあるな」と。勝手に知らなかったからとは言え、とんでもないお得感でしたw 『ファンタスティック・ビースト』の驚きの特別出演的な趣向が延々立て続けに襲い掛かってくる的な。

とはいえ、オリジナルが91分なのに今回のリメイクが129分もあったりするのは個人的には不満で、アニメなら「動いているだけ」で楽しい場面でも、中盤あたりは結構あくびが出てしまうこともしばしば。

また、「どうなんだよそれ」と思わずにはいられなかった「簡単に扇動に乗ってしまう村人たち」と「罪の意識もなく戻ってきて笑顔で踊る村人たち」というあたりは特にエクスキューズも設けず「そういうもんです」というスタンスにしているあたりも実に興味深かったです。まあ、あのあたりは「古典」によくある不条理な部分といいますか、現代から見ると不自然と見えるだけで、別段大したことでもないのかもしれませんが。「村人」って結局記号でしかないですからね。そこを掘り下げると面倒なことになるのかもしれませんし、もしかしたら昔話のテイストが薄れてしまうのかも。ロバに引かせる樽の洗濯とかのディティールがやたらと細かいくせにw

ただ、もうこの映画はやっぱりアラン・メンケンの楽曲でしょう。あの音楽がかかるだけで感動しちゃうんだもの。ある意味反則です。

【129分/シネマスコープ・サイズ/2Kマスター】(TOHOシネマズ新宿9番スクリーン・ドルビーATMOSにて鑑賞)

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