(500)文字のレビュー『ゴースト・イン・ザ・シェル』★★「スカーレット・ジョハンソンはバッチリだが……」

『ゴースト・イン・ザ・シェル』(Ghost in the Shell)★★

スカーレット・ジョハンソンは恐らく3次元ではもっともハマっているキャスティングではないでしょうか。それをあの肉襦袢が台無しに……

約一年ぶりの大阪エキスポIMAXでの鑑賞でした。ビスタサイズの作品ですので、通常のデジタルIMAXシアターであれば画面いっぱいの大画面で観られるわけですが、こちらのエキスポIMAXは日本最大級の巨大スクリーンな上に、IMAXフルサイズを上映できるレーザーIMAXでの1:1.43というアスペクト比なわけで、さらに上下に黒味が残されるという次第です。それでももちろん日本で一番大きな画面で今作が観られることは間違いなかったわけです。ただ、こちらは3D作品でしたので、悪名高いレーザーIMAX3D専用のメガネをつけないといけませんでした(レンズ周辺に光が反射して結露したように白くなる)。

というわけで、プラスなのかマイナスなのかよくわからない環境で観たわけですが、それを差し引いても全体的に「ダサい」ということは間違いないでしょう。「ダサい」といっても個人の主観なので言い換えると「何一つ目新しい要素がない」ということでしょうか。

わたしは士郎正宗氏の大ファンでしたので、当然原作は雑誌連載の時点で読み始めていましたが、30年近く経っていてもそのまんまどころか退化しているような描写も多々見られます。かといって忠実に映画化しているというとまた違っていまして、今作は押井守の劇場版アニメーションのリメイクといっていい作品でした。

だったら、押井守の劇場版アニメーションなみに面白かったのかというと、そうは問屋が卸さないのが映画の難しいところといいますか。

「わざとなの?」と不思議な気持ちになるぐらい、押井守版の「いいところ」がオミットされているのも、モヤモヤさせてくれます。例えば押井守版で犯人がサブマシンガンの弾丸を強力なものに変えるシーンがあるんですが、そのとき反動に耐えるために敵が両足を地面にギュっと踏みしめるカットが入るんですね。それがまあ燃えるわけですよ。本作では同様なシーンはあれど、そもそも弾丸を変えるというアクションすらない。また、クライマックスで同様に多脚戦車と大佐が戦うわけですが、押井守版ではマシンガンのバレルが連射時の熱によってダメになり、即座にバラして交換するシーンがあります。熱を持ったバレルが水たまりに落ちるとジュウと湯気を上げる。本作でも同様のアクションが繰り広げられますが、そういった描写はありません。たったの数カット、特にお金もかからないような描写をオミットしてしまうというあたりで、今作の制作陣がまったく「上っ面だけ」をなぞっているだけなのがわかるというものです。もちろんそういったミリタリーマニアが喜ぶだけのディティールにこだわる必要は本来ないのかもしれません。ただ、この作品は士郎正宗の原作があり、押井守版のリメイクなのですから、そういうディティールを削ることはまったく作ることそのものの意味がないということです。

そもそも最新技術を用いた義体が継ぎ接ぎだらけの肉襦袢というだけでも推して知るべしなのですが……

とはいえ、主演のスカーレット・ジョハンソンのSF顔は現在のハリウッドにおいて大変貴重な素材なので、彼女をキャスティングした功績は大きいと思います。

【107分/ビスタサイズ/4Kマスター】(109シネマズ大阪エキスポシティレーザーIMAXスクリーンにて鑑賞)
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