(500)文字のレビュー『GODZILLA 怪獣惑星』★1/2「今時攻撃の時に「うおおおお!」なないでしょ」

『GODZILLA 怪獣惑星』★1/2

神木などの巨大な植物を起源に持つという設定は大変興味深く、実際のデザインも『シン・ゴジラ』がこだわっていた「人を想起させる直立姿勢」からは離れた、重心の大変低いスタイルが頼もしい。とは言え、正直魅力があるかといえば、さほど無いと思います。あしからず。

2016年の『シン・ゴジラ』の大成功もあって、たった一年後に劇場版としてアニメーションの新作を公開するというのは、プロダクション・プランが見事に的を射たという感覚でしょうか。

とはいえ、元々は1クールの深夜アニメとしての企画だったそうで、無理くり劇場版に仕立て上げたという感覚も作品からにじみ出ており、正直その話を知る前は「これテレビの深夜アニメだったら面白かったのかもなあ」という。

実際三部作という大風呂敷を広げてくれているわけですし、2万年後の地球を舞台】というだけでもSFとしての振り切った設定に胸躍るところもあるのですが、正直全体的に大変「緩め」と言わざるを得ませんでした。「どこかで観たようなビジュアル」「何度も繰り返されて見飽きた演出(今時攻撃するパイロットが「うおぉぉぉ!!」はないだろ)」そういった記号の羅列を否定はしませんが、それを抜きにしても作品内の情報と観客の情報のボタンの掛け違いが多々見られます。いや、掛け違いというよりも「いや、そこボタンじゃなくてチャックじゃないの?」という。人物の背景描写をしないのは大歓迎ですけど、ソレ抜きに突然号泣されてもこちらは手のうちようがない。

基本的な演出部分にしても頭を抱えさせれる幼稚な箇所が多く、例えば序盤の「主人公が窓外の宇宙船の爆発を観て絶叫」というシーンを、モノの数分後に再度リフレインしたりする。しかも、特に演出上の狙いも特に無いままに。もうそりゃ、会長じゃなくても「受け攻めいくつか予想しとったがそりゃ悪手だろ蟻んコ」では済まされない。ほんとできればそのまま飛んでいってくれれば助かると思っちゃいましたよ。

そうはいっても、前半部分の「2万年後の地球を調査するシークエンス」などはやはり胸躍るものもありましたし、ゴジラらしき存在が感知されてなおかつそれが2万年後でも活動中という展開は実に燃えます。

<ネタバレあり>

三部作ということが前提ということもあり(ただ、宣伝ではひた隠しにしているのはフェアじゃない気もします)、第一作の本作は終盤に「おお!」という「三部作」でないと使えないような掟破りの手を打ってきます。

やっとこさ倒したと思ったゴジラが実はオリジナルの本体ではなく、別の個体だったということが分かり、地響きとともに超巨大なオリジナルのゴジラが姿を現す。

まあ、正直「予想の範囲内」の展開ではありつつも、「一応続きを観たい」とは思わせるわけですが、やっぱり

「だったら、ぜんぜん違うデザインにして、アッと驚くような斬新な成長を遂げた、観るものを震え上がらせるような造形にしやがれ」

ってやつですよ。

姿を現したオリジナルゴジラを観ても、「おなじじゃん」と。しかも、文明が崩壊しているので比較になる建造物などもないし、「大きいんだろうな」という観客の脳内補完にも限度というものがある。

言ってしまえば「なんにも良いところがない」今作ですが、さすがに三部作を完結まで見届けるまではともあれ判断は一旦保留ということに。

もうアレですよ。「地球がゴジラ化=ゴジフォーミング」されていて、「もう太陽をぶつけるしかねえだろうが!」という『貞子V.S.伽椰子』的ハッタリをして欲しいもんです。

【89分/ビスタ・サイズ/2K】

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