(500)文字のレビュー『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』★★★「ああ懐かしき80年代ホラー映画テイスト」

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(IT)★★★

日本でも風船やピエロなどで統一されたビジュアルによる宣伝戦略が効果を発揮した。加えてR-15という年齢制限による「怖いもの見たさ」という感情が中高生たちまで巻き込む形になり、ホラーとしては理想的な大ヒットを記録。3週目でランキング1位を獲得するなど、やはり口コミの効果が興行に大きく影響を及ぼすことを立証した形に。

【スティーヴン・キング原作】という肩書は、【スティーヴン・キング絶賛】という惹句と並んで「アテにならない」。

コレは一昔前までは映画ファンにとっては常識と言っていい(意識の高い連中にしてみたら逆効果にすらなりかねない)のだが、ここ数年のスティーヴン・キング・ブランドの復活に加えて、『ショーシャンクの空に』『グリーン・マイル』などのダラボン作品の効果も相まって、そういったマイナス効果はさほどなくなってきているように感じる。

スティーヴン・キングがよく書く笑い話として有名な、見知らぬおばさんに言われたセリフ「あなたはいつもホラーばかり書いてどうしようもない。『ショーシャンクの空に』みたいな作品を見倣いなさい!」というのがあるぐらい。

とはいえ、今作の日本における大ヒットは異例中の異例だ。

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今作のうまいところは、「少年時代」と「現在」を交錯して描いている長大な原作の「少年時代」のみを切り取って脚色しただけでなく、原作の時代設定を現在から遡る形で「80年代」へと修正したことが、現在ジャンル映画界を席巻している「80年代ブーム」に見事にハマる形となったこと。Netflixでも話題になっているTVシリーズ『ストレンジャー・シングス』との絶妙な相乗効果も無視できない。あちらがストレートに「スティーヴン・キングへのリスペクト」に満ち満ちている部分も実に面白い。

「80年代」を意識しているのは時代設定の変更だけではなく、ホラー映画としてのテイストもやたらと80年代風味なのが面白いところ。80年代前半の「ホラー映画ブーム」を彼らと同じ年代で過ごし、ホラー映画を始めとするジャンル映画を浴びるほど観てきた世代からしても、「ああ、この懐かしい感じ」と、普通とはちょっと違うノスタルジーを味わうことができる。特に音楽の付け方や、虚仮威しタップリの驚かせ演出(とは言え、結構タイミングが絶妙で驚かされるので始末が悪い)などなど。

もっともソレだけではなく、ペニーワイズの挙動や「紛れ込む」心霊的演出などには90年代以降のJホラーの影響も多く見られ、ブラッシュアップされている点も興味深い。加えて、ペニーワイズの「顔面」部分をフレームの中に固定しての手持ち撮影(バラエティでよくあるヘルメットに固定したカメラによる映像の発展系)という生理的に気味の悪いカットなど、独特の演出もいくつか見られる点も評価できる。

まあ、総じて「トラウマになるような恐怖」ではなく、大勢で観てスカッと楽しめるという意味での健全さが一番80年代ホラー風味ではないかとも思えるが。

つまり、従来の「立ち直れないようなダメージを被る」ホラー映画や恐怖映画を観たいという向きにはそれほどオススメできる作品ではないのだが、やはり「辛い環境に身を置く少年少女たちが、恐怖という名の脅威に敢然と立ち向かう」というキングならではの骨の部分が見事に映像化さているのはポイントが高い。

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ところで、80年代に時代設定を改変しているというところですが、実際のところ本編ではそれほど80年代を意識させるような美術や設定などは強調されておらず、知らずに観れば(それこそ我々日本人からしたら)原作通り50年代の設定といっても通りそうなところは、結構丁寧に原作を尊重しているように思える。逆に続編となる「大人編」が現在を舞台にすることのほうがかなり難しいように思えますよね。ノスタルジックという武器もないわけですから、そこらあたりも含めて続編のクオリティが気になるところ。

【135分/シネマスコープ・サイズ/2K】

特大のハードカバーで上下、文庫本で4冊もある原作ですが、電子書籍時代ともなれば合本として軽々と持ち運べる時代に。まあ、中身がヘビー級であることは変わりないんでしょうが。

原作を忠実にテレビミニシリーズ化した作品。

スティーヴン・キング原作フランク・ダラボン監督というお墨付きとも言えるブランドを利用した素晴らしいトラウマホラー。この映画のために『ショーシャンクの空に』とかを作ったんじゃないかと思えるほど悪意に満ちているw

キングの長編二作目であり、その後のキング作品のテイストを決定づけた作品。トビー・フーパーによるテレビミニシリーズ作品も傑作。

キングの長編三作目。こちらはスタンリー・キューブリックの映画作品として独自の評価を勝ち得ており、こと「ホラー映画」というジャンルの中で「ただただ怖い」という意味ではトップクラスのレベルを誇る。わたしのこの作品の初見は、早起きした早朝5時からビデオで観始め、観終わってそのまま学校に行ったという忘れがたい経験にもなっている。

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