(500)文字のレビュー『ジョン・ウィック:チャプター2』★★「伝説かと思いきや【中の下】の殺し屋ジョン・ウィックが再び立ち上がる!」

『ジョン・ウィック:チャプター2』(John Wick: Chapter 2)★★

珍しく本編の要素を過不足無くストレートに伝えているポスタービジュアル。ただし、このポスタービジュアルが全てとも言える。

前作『ジョン・ウィック』最大の肝であり評価のポイントでもあった「愛犬を殺されたから皆殺し」という完全無欠の行動動機も無く、「からかって殺した犬の持ち主が凄腕の元殺し屋だった」という「実は殺人マシーンでした」ジャンルからも外れ、一体全体なにが残るんだろうと思って蓋を開けてみたら、そのまま「ただの殺し屋大暴れ映画でした」という身も蓋もない作品として完成した本作。そうなると駄作になるのかと言われれば実はそうも簡単な話ではない。

実際、観ていて前作ほどの「妙なカタルシス」には完全にかけている上に、前作を風変わりなタッチにしていた、「殺し屋後援会」とでもいうべき「コンチネンタル」という組織の存在も影が薄く、スピンオフか後日談かという枠を出ていない作品なのですが、延々徹底的にただただ「銃撃戦と格闘」を詰め込みまくった快作に仕上がっていました。しかも上映時間はなんと122分。正気の沙汰としか思えませんし、実際興味の持てない観客にはビタイチ面白くない作品ですが、混じりっけなしの中学2年生精神を持っている人間にしてみれば、「いや、コレはコレでいいんじゃないの」という感覚も不思議に感じさせる映画になっています。

今作は前作の「私情」ではなく「仕事」として殺しを繰り広げる設定なので、相手のプロとジョン・ウィックとの間に「ビジネスライク」な淡々とした空気が漂っているのも特徴。ジョン・ウィックが「攻め」ではなく「受け」のアクションに徹している点も前作との違いかもしれません。まあ、後半では結局「私情」として「攻め攻め」のアクションに転じるのですが、やっていることは大して変わりません。

銃撃戦描写もぶっちゃけ単調で同じことの繰り返しですし、後半いよいよニューヨーク中の殺し屋から狙われることになる展開の燃えを殆ど活かすことがないまま終盤に突入したりするあたり「なんだ、そりゃ?」という感じ(ストリート・ミュージシャンとスモウ・アサシンと戦うのだけ面白い)。中でも腰が抜けたのは、満員電車に因縁の相手と一対一になるシークエンス。「こりゃ近年流行りのエレベーターバトルを超えるのか?!」と期待させつつ、結局「空くのを待って」戦いだしたり。「おいこら!」という肩透かしが多いのも実にもったいない。クライマックスもまた椅子から転げ落ちること請け合い。モーフィアスから「7発」しか弾をもらえなかったジョン・ウィック。「7発か……」と考えながらもそのまま敵陣へ殴り込み。こちらとしては、その弾を温存して格闘だけで大勢と戦うのかと思うわけですよ。真っ当な映画ファンなら。「伝説の殺し屋」なんですから! そして、ラスボスと対峙してのジリジリとしたタメからの、いよいよバトル開始! 伝説の殺し屋ジョン・ウィックさんときたら、いきなり最初の攻防で全弾撃ち尽くし! 挙句に「あ」ってなったり。「あ、じゃないっしょ! 最初から分かってたじゃんかナリ!」と。

前作では「ジョン・ウィックが実は全然伝説の殺し屋でも何でも無く、凄い噂だけが蔓延している」という設定も面白かったんですけど、今回に至っても「中の下」クラスの殺し屋感はいかがなものかと。やはり、この「実は凄腕でした」の金字塔であるデンゼル・ワシントンを超えることは難しかったようです。だって、キアヌ必死ですもんw

もっとも、前作『ジョン・ウィック』のアクションの目玉でもあったCQC(近接格闘術)に銃撃戦を加えた独特のガンアクションをとことん突き詰めていったシンプルなアプローチは、下手にカーアクションや爆破アクションに陥ることがなかったという意味では評価できます。

個人的に最後の最後の絶体絶命に陥ったシチュエーションでブツっと終わるのは結構痺れただけに、じゃあ「チャプター3」どうするんだよという、あらぬ期待を抱かせる無謀ぶりには拍手したい。

【122分/シネマスコープサイズ/2Kマスター】(イオンシネマ板橋3番スクリーンにて鑑賞)

前作のジョン・ウィックも「ちっとも伝説の殺し屋じゃないじゃんかナリ」ブリがポイントでしたが、もうちょっと本領発揮しても良いんじゃぞ。

「実は凄腕の殺し屋でした」カテゴリーで他を寄せ付けない存在感を誇るデンゼル・ワシントンさんの大活躍が楽しめる傑作。

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