(500)文字のレビュー『ジャスティス・リーグ』★★1/2「第三者の途中参入の是非とハリウッドの製作スタイルの功罪」

『ジャスティス・リーグ』(Justice League)★★1/2

結果的にこちらのクールな絵柄のポスターから連想されるルックスからはかけ離れた無難なテイストに。

何年も経って記憶から記録へと移ってしまえば、『風と共に去りぬ』が本来ジョージ・キューカーが監督だったがヴィクター・フレミングに交代したというように、「知っている人だけが知っている」ような顛末になるのかもしれないが、最近ビッグバジェットの作品でのテコ入れや交代劇が目立ってきている。本来ハリウッドは典型的なプロデューサー主体の「工場スタイル」のプロダクションなので、公になっていない(あるいは情報が流れていない)だけで山ほどこういう事案は存在するはず。

近年で大きいのはやはり『ローグ・ワン』の再撮影、『ハン・ソロ』のロン・ハワードへの監督交代。

今作ではザック・スナイダー監督が身内の不幸によりポスト・プロダクションから離脱。その後を引き継いだのがジョス・ウェドン『アベンジャーズ』などで知られるが、本来はスクリプト・ドクターとしても有名で、この手の仕事はお手の物と言える。

シナリオに大きくウェイトを置くはずのジョスと、ビジュアル・スタイルが売りのザックが合わされば、普通で考えれば作品の質は向上するはずだが、それは「撮影前」のプリ・プロダクションであればの話。今回はほとんど撮影も終わっている段階での参加なので話はまったく違ってしまう。

あくまでもネットの情報のみから推測するしか無いが、ジョスに交代した段階でシナリオの改変に伴い大幅な再撮影及び追加撮影が行われたということに。

あくまでも劇場公開バージョンを観ただけの判断ではあるものの、明らかにザック・スナイダーが撮影したシーン(カット)と、ジョスが追加撮影したと思われるシーン(カット)ではルックスに違いがある。当然ハリウッドの職人が大量投入されることで普通に観ていて違和感は無いものの、従来のザック・スナイダー監督作品に比べてしまうと明らかに「別物」と感じられてしまう。何より前作である『バットマンvsスーパーマン』が飛び抜けて彼の持ち味が発揮されていた作品だけになおさらだ。

では、ジョス・ウェドン監督の作品として考えるとどうなるのか。それはつまり交代劇の裏の事情を何も知らない人がこの作品を観た場合。

恐らく従来のコアなファンでない人たち(筆者もアメコミにはまったく無知である)にとっては、「思った通り」の作品に仕上がっているのではないだろうか。

「一人では太刀打ちできない強大な軍勢が現れたので、ヒーローたちが結束してチームを作ってやっつける」

というそのままの作品であり、この手の「お祭り映画」に大切な「適度な緩さと適度のユーモア」が実に見事な塩梅で加味されている。「会社から雇われた立場」としてジョスが本来持っている職人としての腕前が遺憾なく発揮しているといえる。

ただ、現実の世界にはこの手の「お祭り映画」として求められるテイストを維持しつつ、「一本の大作映画としてのクオリティを不必要に高めた」作品としてマーベルの『アベンジャーズ』という傑作が存在しており、この手の「お祭り映画」としてファンから求められるハードルは確実に高くなっている。

そしてその現状を作り出した張本人がジョスその人であるというパラドキシカルな状態。

結局どういうことなのかといえば、やはり先述のようにハリウッドの娯楽映画作品はあくまでもプロデューサー主体のマニュファクトリーなので、今回のような状況で注目すべきは製作陣の方向性や制御力などにあるのではないだろうか。

つまり、マーベルと比較する場合、マーベルでは中心人物のケヴィン・ファイギが全権を握っており、なおかつ彼自身の目指すスタイルが(良かれ悪しかれ)一貫している事が現在の成功のポイントである。対して、DC映画の場合ザック・スナイダーという「作家性」の塊のような人間を中心においていた事を持て余してしまったのだろう。

そして、現在のDC映画のファンは(良かれ悪しかれ)ザック・スナイダーのハイカロリーな作品からの大きな転換に戸惑ってしまうのだ。

もっとも、工業製品として観た場合DC映画というユニバースをこれから大きく広げていく転換点となるはずの今作で、(強引とはいえ)舵を切り替えたことを「製作会社の戦略」として理解は可能。

まあ、キチンと「お祭り映画」としてのクオリティを保っているあたりはジョス・ウェドンの力を評価しないわけにはいかないんですが、冒頭のバットマンのシーンを「コメディ過ぎる」と更に改変を要求してきたというあたり、製作側の「分かってねえな」感は強く感じてしまうんですよねえ。逆にその「分かってねえな」というところがザックを起用という「無茶」さにつながっていた事を考えると、何が正義か悪かはわけが分かりませんが。

でも120分に収めてあったり、フラッシュが楽しかったり、アクアマンが本音を吐かされたり、スーパーマンが団地ごと人助けしたり、要所要所で明らかに面白いシーンがあるのも素晴らしいわけで、楽しい映画であることは確かです!

結論から言えばちゃんと監督のクレジットも責任をもってジョス・ウェドンに変えるべきか、共同監督としてクレジットすべきだったんではないかなと思います。

【121分/ビスタサイズ/2Kマスター】

やはり、どう考えても一作目でこのテンションと大規模な地球のピンチを描いてしまったのは計算違いだったのではw まあ、そこがこの映画の最高なところなんですが。

3時間超えとはいえ、この作品に関してはアルティメット・エディション一択です。全然面白さが違います。劇場公開時はピンとこなかったのに、アルティメット・エディションで観たら全然違っていたので驚かされます。まあ、それを抜きにしてもワンダー・ウーマン登場のテンションは普通じゃないですが。「君の連れか?」「お前のだろう?」

DC映画でまさかの大当たりをした『ワンダー・ウーマン』作品のテイストも明朗快活なヒーロー映画となっていて大いに楽しめる。なにより主演のガル・ガドットとクリス・パインのコンビが最高。

絶対に「この手の映画」で作品としてのクオリティ達成は無理だろうと誰もが思っていた難題をモノの見事に達成した名作。ジョス・ウェドンの偉業。

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