(500)文字のレビュー『君の膵臓をたべたい』★★「ちゃんとノボラピッドやぶどう糖をポーチに入れているのは素晴らしい」

『君の膵臓をたべたい』★★

単純にヒロインの子がわたしの好みではないというだけの理由で評価が下がるというのもいかがなものかと思いますが、そればっかりは仕方がない。

出版当初から「なんだこのタイトル?」と話題騒然となり、あれよこれよという間にベストセラーに。『世界の中心で、愛をさけぶ』では柴咲コウの帯の推薦文一発で超ベストセラーになるような出版界ですから、当然こういう「タイトル勝ち」という事はよく起こります。

実際筆者も「で、結局どんなお話なの?」という低能な理由で初日に観ているんですから、まあ所詮そんなもんですよと。

ただ、もう一点筆者には興味を持つ個人的な理由がありまして、身内に「劇症一型糖尿病」の人間がいるということです。この病気の厄介なところは、「原因が未だに不明」「現在のところ治療方法がない」「症状が生活習慣病の二型糖尿病と一緒なので、身から出た錆だといわれのない偏見を抱かれる」などです。

果たして、この映画のヒロインもポーチの中の「インスリン」や「ぶとう糖」などなどの小物を入れていることから推察するに、何らかのインスリンに関わる疾患だと思われるのですが、本編では病名は明らかにされません。まあ、近年ではハッキリとした病名を映画の中で使うと色々と問題があるのでしょうが、「糖尿病」と言ってしまうとヒロインに対する同情に対してノイズになることは明白なんでしょうね。

閑話休題。

とはいえ、結局いつもの「難病余命あと少し映画」の一本としては平均的なデキであり、現代パートと過去パートの整理もどうにもうまくいっていないような印象を受けてしまいます。

九州旅行のくだりも、観光映画としての魅力に著しく欠けます。

ただ、主人公が「本人が悲しんでいないのに他人の自分が悲しむのはお門違い」といって泣いたり喚いたりしないのは非常にポイントが高く、全編を通じてそのアプローチは上手く作用しています。そして、終盤でそれが一気に大きな泣かせポイントに雪崩込むのも非常に評価できます。実際涙腺がちょっと緩みました。

まあ、ああやんないのかなあと思っていた「主人公が突っ走る」を最後の最後にやられたのには苦笑しましたけど。

【LGM】が終焉を迎えようとしている今でも、やはりその方法論は生き続けていくのかなあと。

とはいえ、全体的に岩井俊二の傑作『Love Letter』の呪縛は日本映画を大きく縛っているんだなあという苦々しさは感じます。誰かがどこかでアレを刷新する傑作を作る必要に日本映画は迫られているんではないでしょうか。

少なくとも、そろそろ「図書室離れ」は必要なんではないでしょうか?

【115分/シネマスコープサイズ/2Kマスター】

とはいえこのタイトルを思いついたのは素晴らしい。

製作、脚本などなどそのまま『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』チームによる作品です。

ほんとみんな好きだよなあと苦笑してしまうような名作ですが、筆者も好きなのでどうしようもないw

今作でも、この映画の中で使われた「今日の日はさようなら」のような必殺技があればと悔やまれる。

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