『ラ・ラ・ランド』(LA LA LAND)★★★

ライアン・ゴスリングの完璧な手の角度!
言うまでもなく、ミュージカルの命は「歌曲」である。あの鬱映画として名高いラース・フォン・トリアーの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』だって、ビュークの歌が無ければとても観ていられなかったように。したがって誤解を恐れずに言うなら、大抵のミュージカルは「歌曲」がメインなので、「ストーリー」は添え物と言ってもいい。これはなんだったら「アクション映画」に置き換えてみてもいい。ストーリーがどれだけ面白かろうと、見せ場のアクションシーンがつまらなくて退屈ならそれは「アクション映画」ではない。その点この作品はその肝である「歌曲」がやったらめったら耳に残る名曲が揃っている。主なナンバーは3つですが、そのどれもが簡単に口ずさめるし、思わず口ずさんでしまう。ミュージカルの「歌曲」でこれ以上の高ポイントはない。基本的に予告編は観ない主義ですが、耳は閉じられないので否応なくあのメロディが聴こえてくる。そして、それだけで「こりゃ楽しそうだ」と思わず顔がほころぶ。それが今作『ラ・ラ・ランド』のシンプルですが究極の評価。が、先述の論を発展させると「どうせ添え物なら面白くしたほうがいいよね」というわけで、メインディッシュが美味しいなら、やっぱりサイドメニューも美味しい方がいいに決まっている。そして、「アクション映画」だってドラマやギャグやサスペンスなどの副次的なパートの出来が良ければ良いほど作品の評価は相乗効果で高くなる。今回の『ラ・ラ・ランド』、スタイルは古典的なMGMミュージカル風を装っていながら、副次的なストーリーが実にビターで切ない。そして、訪れるラスト8分の「モンタージュ・シークエンス」。今まで散々耳に流し込まれた「多幸感のあるメロディ」がどれもこれも「対位法」として切なく心に響いてくる。監督脚本のデミアン・チャゼルの前作『セッション』がラスト9分からのエンドクレジットに入る瞬間に全力を集中していたように、恐らく今作の眼目もあのラスト・シークエンスでの「効果」に置かれているのは明白。したがって、実は「多幸感あふれるミュージカル」というスタイルそのものが、「ラスト8分」というメインディッシュへの添え物とも考えられる、実に戦略性の高い作品でもある。
La La Land – The Complete Musical Experience
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