(500)文字のレビュー『女神の見えざる手』★★★「二転三転するハイカロリーな策謀劇に酔いしれる」

『女神の見えざる手』(Miss Sloane)★★★

マーク・ストロングが髪の量に反比例して一歩引いた素直なキャラを堅実に演じ、ジェシカ・チャステインに全部美味しいところを譲ったジェントルな一作。

この邦題の巧妙さはどうだろう。

原題は『Miss Sloane』ジェシカ・チャステイン演じる主人公の名前である。アメリカの映画にはよくある「シンプル・イズ」なタイトルだ。たいていこういった作品の場合、邦題をそのままにできるはずもなく、キャラクターやストーリーを可能な限りねじ込ませたような「鼻で笑ってしまう」ようなタイトルになるのが通例だ。

もっとも『許されざる者』以降の「困った時の『ざる』映画」とも言えるので、たまたま作品の内容に上手くフィットしたという結果論で考えるべきかもしれないが。

今作は「ロビイスト」という、一般人にはほとんど全くと言っていいほど正体の分からない業種を描いている。そういう意味では『マルサの女』などの「マイナーワーク映画」の一種であり、コレを観ればもう十分と思えるほど(思えすぎるほど)「ロビイスト」という業種への理解は深まるであろう。その手のジャンルには一定のファンがおり(たいてい「プロジェクトX」も好きだったりする)、かく言う筆者もその手のジャンルの映画は大好物であるが、今作の素晴らしいところは、その手のジャンルのファンに対する目配せも満点に行ってなおプラスアルファとしてのエンターテインメント性の高さを確保している事だろう。

この手のジャンルの映画はともすれば「説明」そのもので作品が成り立ってしまうため、ソレで十分な場合も多々ある。

しかし、この映画は極論で言うと「スパイ大作戦」と同種のアクロバティックかつダイナミックな【コンゲーム】として大変優れているのだ。

社会性が高いように思わせ(実際メッセージ的な部分でも強固なものを持っている)、ゴリゴリのクソ真面目映画のように感じさせることが大きなミスディレクションになっている。

それがミスディレクションになっているという言及そのものが、ネタバレかもと気になってしまうほど見事に作り手の掌で転がされる快感が味わえる作品。

二転三転するカロリーの高い策謀劇が好みなら一見の価値のある快作である。

【132分/シネマスコープ・サイズ/2K】
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