(500)文字のレビュー『俺物語!!』★★1/2「野木亜紀子さんのLGMはやはり的確な脚色が冴え渡る快作」

『俺物語!!』★★1/2

鈴木亮平の漫画から抜け出てきたような役作りが開幕1秒で作品の方向性をガッチリしめす。最近すっかりお気に入りになってしまった坂口健太郎のハマり方もグッドキャスティング。

テレビドラマ『掟上今日子の備忘録』以来すっかりハマってしまった脚本家野木亜紀子さんの映画作品で唯一残っていた本作を遂に鑑賞。原作も大好きでしたが、取捨選択も含めて相変わらず的確で上手い脚色を堪能。コミックの実写化における脚本担当は『主に泣いてます』『アイアムアヒーロー』『俺物語!!』『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』という具合に、御用達と言ってもいいほどのラインナップです。ところが、ラインナップをよく見るとコミックの対象年齢などが微妙にそれぞれ違っているのが面白く、それを踏まえて観ると実にそれぞれの作品の「商業的方向性」を踏まえた上で脚色をしているのが分かります。特に今作は今のところ野木さんとしては唯一の【LGM】(ローティーン・ガール・ムービー)ですが、これまた監督の目指すルックスと相まって、「コミック」→「映画」という翻訳手法が野木亜紀子節ともいうべき「コメディチック」なものになっていて大変楽しい作品に仕上がっていました。パーツとしてLGMの要素をちゃんと踏まえていた上で(ちゃんとクライマックスは主人公の全力疾走)、対象では無い層(ズバリわたしのようなw)が観た時に引っかかるLGM特有の「灰汁」がきれいに取り除かれているのも絶妙な配慮。そもそも原作の『俺物語!!』そのものがマーガレット読者層に対してのアンチテーゼのような作品になっているので、その部分をちゃんとLGMとして映画の中でも構造に埋め込んでいるのが興味深い部分です。そもそも「取り巻きがクズ」というパーツも無いので観ていて単純に生理的に気持ち良い。それにしても、冒頭30歳過ぎた鈴木亮平に中学生を演じさせた上に、明らかに現役中学生と思しきこどもたち(笑うだろそりゃ)に周りを取り囲ませるという出落ちギャグが素晴らしすぎて、すっかり作品世界に取り込まれます。とにかくストレスのない健全なロマンチック・コメディをこのジャンルでキチンと作ったのは実は結構な成果だとLGMを大量に観ている現在ではよく分かる。

【105分/ビスタサイズ】(DVDをプラズマテレビにて鑑賞)
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