『沈黙-Silence-』(Silence)★★★

不憫を数値化した【ガーフィールド値】。最初こそ人間が許容できる数値を示していたが、終盤では高濃度のガーフィールド値を叩き出し、劇場内がホットスポットと化す。
役者塚本晋也が他を圧倒する序盤からしてスコセッシ積年の怨念とも言える「映画圧」が、観客を異様な力で絞り上げる。キリスト映画でメル・ギブソンに暴力的なアンサーを叩きつけられたスコセッシが、今度はお株を奪う「拷問」でペイバック。【キ◯ガイに刃物、巨匠に「史実」】の格言通り、「史実に基づいてるんだからいいんだ」という免罪符でやり放題。要所要所で的確な拷問ブローを観客に叩きつける。
イッセー尾形が身体を極限まで縮めて見せれば、浅野忠信も「マイティー・ソー」の仕返しとばかりにふてぶてしい芝居を披露する。アダム・ドライヴァーが司祭なんて何の冗談だと思いきや、「短気な司祭」ということでフォースの平衡を感じる。
「ノンモン=無音」の挿入がことごとく的確に観客の心をコントロールすることに成功しており、「音響映画」として『プライベート・ライアン』共々映画史に残るべき作品。
なお、図らずも『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の直後に観てしまうという、前代未聞の失態を犯した人間として、小松菜奈さんの非業の運命にガーフィールドどころではない表情を浮かべたことを、軽はずみに小松菜奈さん目当てに観ようとする軽率な人間のためにここに記す。
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