(500)文字のレビュー『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』★★★1/2「いよいよフォースの新の力が解き放たれた傑作」

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(Star Wars: The Last Jedi)★★★1/2

この作品のためだけに歳をとったとしか思えないマーク・ハミルの見事な顔面力に圧倒されます。34年の重みの持つパワー。

思えばタイトルが素晴らしい。

本編を観終えた時、前作『フォースの覚醒』と併せて、今回の『最後のジェダイ』というタイトルのもつ大きな意味に気づかされて震えがきたほど。

前作『フォースの覚醒』から始まった新たなサガ。それはルーカスという「大いなる力」から解き放たれた形で製作されたことが、本作の大きなテーマとも呼応するようになっていて、全体を通じたストーリー・ラインの美しさにときめかずにはいられない。

隠居したジェダイの師がそうしたように、自分もすっかり偏屈な世捨て人に成り果てたルークは、突然訪ねてきたレイによって薄々感づいていた「フォース」の存在意義と「ジェダイ」の存在意義を明確に悟る。

スター・ウォーズが全作を通じて「結局何なんだよ?」と観ている方がどうでもよくなってきていた「フォースがバランスをもたらす」という言葉。多分ルーカスが「それっぽいこと」として使ってきた記号的なソレを、新しい作り手たちは見事に拡大解釈することに成功した。

「フォース」という全宇宙を支配する巨大な力(理力)は、「ジェダイ」が持っている力ではなく、「ジェダイ」はそれを使うすべを心得ているだけだということは前シリーズでも明確に言葉にしていたが、ストーリー上結局「フォース」はジェダイとシスの戦いの手段としてしか表現されることはなかった。

ところが、今作ではいよいよ「フォース」という存在が実際にはどういったものであるかという「存在意義」が観客に明示される。

<以下ネタバレを含みます>

前作『フォースの覚醒』で主人公の一人レイは辺境のジャクーで、来るともしれぬ両親を待ち望んでいたが、今作で彼女の正体が「誰でもないただの人間である両親に捨てられた子ども」だったことが判明する。あれはレイが自分の存在意義を保つために心で作っていた儚い拠り所だったことが分かる。

アナキンも突然生まれたきた存在であり(父親はいないとされている)、生まれは「奴隷」である。レイは「ルークの娘」という生ぬるい予測とは違って、「存在としての素性」がアナキンと同じなのだ。その「存在」が「血脈」としてのカイロ・レンと共鳴し半目する。クライマックスでのライト・セーバーを使ったビジュアルで見せつける2人の拮抗と葛藤は実に素晴らしく、挙句に力場によって2人が左右に押し離されるという燃え燃えのカットまで。

そして、今作では中盤で奴隷同然に扱われている子どもたちが描かれる。今作で登場した整備士であるローズもかつては同様の境遇であった事が仄めかされ、彼女とその姉による行動によって数多くの命が救われ、同時に犠牲にもなる。

『ローグ・ワン』で登場したチアルートの存在とその言葉が示唆していたように、「フォース」は「ジェダイ」のものではない。『ローグ・ワン』に描かれた「ジェダイ」ではない「普通の人々」の活躍が、結局は銀河の趨勢を左右したように、ルーカスの手から離れた新しいスター・ウォーズの世界では、遂に「フォース」の存在が「覚醒」していたのだ。

したがって、「最後のジェダイ」であるルークはそれを確信できたことで、遂に心の平穏を得る。

アナキンとルークを通じて描かれた前シリーズのテーマである「血脈」や、「ジェダイ」や「シス」を通じて描かれる「選ばれた者」という前時代的なテーマに対し、今回のサガでは「誰の子でもない」「普通の人々」がそれに抗い立ち向かう様が描かれている。まさに「リパブリック」と「レジスタンス」である。ルーカスが(多分適当に)こねくり回していた言葉遊びにも似た「アメリカの神話」としてのスター・ウォーズ・シリーズに、明確で現代的なテーマを新たに結びつけていることが明確に描かれることになった今作は、『フォースの覚醒』にあった「接待」から大きく解き放たれた傑作である。

完結編となる(はず)のエピソード9で、「普通の人々」たちがいかにして「フォース」のバランスを受け入れるのか楽しみで仕方がない。

・・・

まあ、そんな御大層な理屈を抜きにしても、今作は「熱い」展開や「それ観せてくれる!?」という絵面がてんこ盛りってのが良い。

レイとレンが「背中合わせ」で共闘するシーンは燃えまくりだし、ルークが「たった一人」で強大な敵の大群の前に歩み出るカットなんて「うほ!!」ってなもんですよ。しかも「全火力をやつに浴びせろ!」とか、それを浴びたあとのシレっと「肩のホコリ」を払う仕草とかw

今作は『帝国の逆襲』を踏襲して、「間の話とはかくあるべし」という感じでオープニングの「あらすじ」でいきなり前作の大活躍なんて無視して最悪の状況に陥っているのが最高。「それでこそスター・ウォーズだよ」と。説明なしに復活しているファズマなんて、ワザワザまたやっつけられるけど、シレっとまた復活しそうなところも良い。

ローラ・ダーンの「実は……」という展開もまた熱い。筆者はああいうのに目がない。

個人的に全編通じてコケにされてコメディリリーフとなっているハックス将軍が良い。彼が今作でも殺されないで生き延びた意味は、必ず完結編で実を結んでほしい。ベネチオ・デル・トロのキャラがヒントになっていると思いますが、今作ではフィンがストーム・トルーパーから主人公になったように、前シリーズの「帝国軍」が記号的な絶対悪として描かれていたことから一歩進めて、ファースト・オーダーの人たちが「悪」から開放されるべきだと思いますよ。「ドカーン!」ってやっつけて終わりという時代でもないでしょう。

さあ、鼻眼鏡野郎JJが完結編でどう決着をつける気なのか。お手並み拝見というところですね。

【152分/シネマスコープ・サイズ/2K(4Kマスター)/ドルビーATMOS】
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