(500)文字のレビュー『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』★★「トムの汎用性が更に高まる珍作」

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(The Mummy)★★

『キングスマン』の義足刀女、『スター・トレックBEYOND』の異星人と続けざまに特殊なキャラを演じながらもオタクのハートを鷲掴みしまくるソフィア・ブテラさんが今回もストーカー気質の女ミイラという特殊なキャラを怪演。

『ザ・トム』

とは、友人がこの映画を指してカジュアルに編み出した呼称であるが、トム・クルーズの映画にも実際には何種類かカテゴリーが存在している。

トムは一時期から脇役もキチンと引き受けて、それがまた主役の時よりも押しなべて評判がいいという具合に、必ずしも『ザ・トム』という映画ばかりでもない。

とはいえ、今作は観る前も、そして観た後も、『ザ・トム』でチケットが普通に買えるぐらいには、立派な『ザ・トム』映画でした。

実際問題この映画にどうしてトムが主演しているのかは結構謎が残るキャスティングなのだが、結果的にトムが出ていないと映画として成り立たないのも事実という作品。では、トムしか見どころがないのかといえば、実はそうでもないのがこの映画の困ったところである。

例えば、最近すっかり熊さんのようにむっちりまんまるになったラッセル・クロウが、あのジキル博士を演じた上に、あのすこぶる良い声で延々ナレーションまでしてくれる。

何か色々な憑き物が落ちたとしか思えないほど、最近の活躍は観ているこちらの笑みがついこぼれてしまうようなラッセル・クロウ。一時期の「オスカーがもっと欲しいんじゃ!」「もっと不倫して楽しみたいんじゃ!」的な陸ロケンローラー的雰囲気はすっかり流れ去って、実にいい男になっている。

このラッセルがまた良い。

ジキル博士なので、当然ハイド氏に変身しちゃいそうになるが、注射でなんとか発作を抑えて理性的に頑張っている。もっとも、たまたまちょっと注射が遅れてしまったらさあ大変。いきなり大暴れで見境なしに周りのものに襲いかかる始末。今回ユニバーサルが計画している「ダークなんとか」とかいう「マーベル」や「DC」にあやかったような安易な企画の第一作目とあって、このハイド氏はぶっちゃけハルクの代用品的なポジション。ただ、それでも注射が間に合ったら「危なかった……」と、ふいぃいっとばかりに何とかなっちゃうあたりのユルユルさ。ただ、それをラッセルが真面目な顔して演じているから妙な楽しさにつながっているのも事実。

加えて、副題にもなっている「呪われた砂漠の女王」を演じているソフィア・ブテラさん。『スター・トレックBEYOND』でもメイクで素顔が殆ど分からないにも関わらず、やったらチャーミングで頼もしい異星人を超好演。引き続いての今作でも悪役にも関わらず本来のヒロインが名前も思い出せないほどのヒロインぶり。ラッセルに捕まってもだえ苦しむあたりの萌えはなかなか夏休み映画とは思えないようなエロさも発揮。

と、ここまで書いていて、「じゃあ、トムはどうなんだ?」と。

この作品、先述の通り『ザ・トム』映画ではあるものの、これが毎度おなじみのトムとは一味違う味付けが施されている。

それは、今作のトムが「ヘタれ」だということだ。

端的に衝撃的なシーンがあったので、それを書いておくと。

教会でミイラ軍団に襲われたトムは、間一髪その危機を脱すると、そこに居合わせたヒロイン(一応本作にはミイラ以外にヒロインらしき女性が出て来る)を、

置いてけぼりにして!

脱兎のごとく自分だけ逃げ出すのだ。

しかも、大慌ててで(そりゃ主人公に置いてけぼり食らうなんて、ヒロインとしては前代未聞だろう)追いついてきたヒロインに

「あなたわたしをおいて逃げたでしょ!!!!」

詰問される始末。

トムときたら、それをガン無視でひたすら逃げる。

これがもうたまらない。大笑い。

このシーンだけでも入場料の元は取れるほど面白い。

が、

残念ながら、うんざりするほど長ったらしいエンド・クレジットで帳消しになってしまうのが、やっぱりこの映画が評価されない要因でもある。

とはいえ、トムのファンは絶対にあの新境地は体験すべき珍作であることは確か。

【110分/シネマスコープ・サイズ/2Kマスター】
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