(500)文字のレビュー『東京喰種トーキョーグール』★★1/2「映画史に残る不味そさ爆発のハンバーグは、裏美味シネマレベルMAX!」

『東京喰種トーキョーグール』★★1/2

序盤のみの登場ながら、そのユニークな魅力を遺憾なく発揮しまくる蒼井優さん。あのベロベロのエロさ!

このサイトの名前である「美味シネマ」は、そのものズバリ「映画の中の美味しそう」についてアレコレ書くつもりでつけたものですが、いっこうにそういう記事を書くキッカケがつかめないまま現在に至っております。

そんな「美味シネマ」とは逆に、当然映画の中には「不味そう」な食べ物や食べ方もたくさん登場します。『インディ・ジョーンズ魔宮の伝説』でインディがインドの村で振る舞われる「ウ○チ」としか言いようのないごちそうといえば話は早いでしょう。

筆者は「美味しそうにごはんを食べる役者」さんは最高の役者さんだと思っているのですが、映画の中で「美味しそう!」「不味そう!」と思わせるのは、総合芸術のすべての要素が絡まりあって初めて成立させることができます。

そんなか、今回の『東京喰種トーキョーグール』

「人間を食べるグールという種族」が東京の闇で生きながらえているという世界設定です。

つまり、人間が近代化によってやっと克服した「捕食される」という原始的恐怖を描いた作品なのです。

この「捕食される恐怖」はありとあらゆる恐怖の中でもストレートかつ複雑な要素をもっているために、しばしばホラー映画以外でもすきあらばモチーフにされてきました。

この映画のもっとも衝撃的な恐怖はやはり「食べられる」というアプローチではないでしょうか。

スピルバーグのこの超名作も、つまるところ「人が食べられる」という原始的な恐怖を描くショッキングさがあの爆発的ヒットの要因であることは疑いようもありません。

果たして今作。

序盤から通常の映画作品に比べても3割増しはあろうかというほど登場人物がアレコレ「食べる」シーンがてんこ盛りに用意されています。

そして、これが壮絶に「不味そう」!!

映画史を見渡しても、ここまで「食べる」描写が不味そうに感じる映画もなかなかない。ゾンビ映画でももうちょっと美味しそうにみえるぐらいです。

当然これは、「グール」にとっては、「ヒト」以外すべて凶悪に不味いという設定だからです。

主人公はデビルマンや寄生獣よろしく、「半分人間、半分グール」という体質になってしまう。

あのキングオブ美味そさである「ハンバーグ」ですら、一口くちに入れた途端にゲロゲロゲロ!!

このハンバーグ・シークエンスときたら、ジュウジュウ鳴る音は強烈に美味しそうなのに、ハンバーグそのものは逆光気味のCM業界的には完全にアウトな「シズル感ゼロ」の凄さ。加えて主人公を演じる窪田正孝さんの「モグモグ」芝居が、完全に人肉でも食ってるとしか思えないような素晴らしさ。

 『ドラえもん』小学館てんとう虫コミックス14巻13ページより引用

まさにこれに匹敵する凄味がある。

前半部分を通して、徹底して描かれるコレらの「不味シネマ」見本市。こんな題材でもなければ誰得としか言いようのない代物だけに、「裏美味シネマ」として大変貴重なテキストになっています。

転じて、序盤で文字通り美味しいところを全部持っていく蒼井優さんときたら、血まみれの窪田くんの顔面をベロンベロン舐めまくるという強烈なエロチシズムを披露。あのシズル感!

 『ドラえもん』小学館てんとう虫コミックス13巻46ページより引用

「味のもとのもと」をかけたとしか思えぬ美味そ感!

設定などを見る分には先述したように、『デビルマン』や『寄生獣』などなど、日本のコミック界では目新しいものではありませんが、この「美味い不味い」という感覚を徹底させている点で独特のポジションを確保している作品なのではないでしょうか。

そもそも、床にばらまかれたポテチを牛乳まみれにするとか、なんのメタファーなんだよというハイクオリティな不味そさですからね。

【119分/シネマスコープ・サイズ/2Kマスター】

中盤のパーティーシーンのゲテモノ料理オンパレードは有名ですが、やはりインドの村でダサれるウ○チめしに勝るものはなかなかないでしょう。スピルバーグの本質が一番良く出ている作品だと思います。

デビルマンも「食べられる」という恐怖が初期のテーマでした。殺されるというよりも食べられてしまう恐怖。

説明不要の名作。そのものズバリの「捕食される」恐怖がメインテーマになっています。バツン。

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