【ブルーレイレビュー】『ナイスガイズ!』★★1/2「とても『アイアンマン3』の後に撮ったとは思えないほど肩の力の抜けたいつものシェーン・ブラック」

『ナイスガイズ!』(The Nice Guys)★★1/2

毎度おなじみ(と言うには長い年月のスパンがありますが)シェーン・ブラックのバディ&こども物映画の快作。ライアン・ゴスリングが『ララランド』と全く同じ舞台で全く真逆のキャラを演じる。

シェーン・ブラックといえばバディもの。バディものといえばシェーン・ブラック。

1987年に『リーサル・ウェポン』の脚本にて鮮烈なデビューを飾ったシェーン・ブラック。その脚本作のフィルモグラフィを観て誰だって気づくのが「全部バディものじゃないか」である。

とはいえ、バディものは何もシェーン・ブラックの専売特許でも何でも無く、大昔から数限りなく作られてきたスタイル。

今作ももちろんバディものであるが、ここで注目するべきはシェーン・ブラックのもう一つのモチーフである「こども」の視点である。『ドラキュリアン』は言うに及ばず、『ラスト・ボーイスカウト』『ラスト・アクション・ヒーロー』と「こども」がメインキャラクターであったり、メインキャラクターに絡んでくる事が数多い。近作『アイアンマン3』でも中盤でこどもがトニーの相棒として活躍するのは記憶に新しい。

シェーン・ブラックの描く「こども」は、年齢や外見こそ子どもであるが、ほぼ例外なく「おとな」と同等の扱いをキャラ設定を施されており、普通の映画での約まわりである「足手まとい」になることは殆ど無い。もっと言えばオトナのキャラが「足手まとい」になっているのを手助けすることもしばしばだ。

今作『ナイスガイズ!』でも、当然のようにライアン・ゴスリング演じる「ダメな親父」を手助けする娘がメインキャラとして登場し、やはり物語上重要な役回りを演じる。そのくせダメな親父がちょっと良いところを見せると影でニッコリ笑ったりするチャーミングさも。

シェーン・ブラックの基本スタンスはコメディだ。

ハリウッドの商業ベースに乗るために、アクション満載でバイオレンス描写も満載にされているが、基本的には彼の持ち味は「行き過ぎたハードボイルド」「ハードボイルドのパロディ」とでもいうべきスタンス。

「いつの時代だよ!?」

と笑わずにはいられないような、ワイズクラックを主人公が多用するのが良い例で、常に皮肉交じりに相手を挑発する。

とはいえ、その真意をキチンとくんで製作された作品は数少なく、フレッド・デッカー監督の『ドラキュリアン』と、当初からコメディとして製作された『ラスト・アクション・ヒーロー』ぐらいではないだろうか。

そんな中、『アイアンマン3』での世界的大成功を受けたシェーン・ブラックが自身の次回作として、ここまで円やかな全編多幸感に溢れたコメディを作ったというのは、長年のファンとしてなんとも嬉しい気持ちでいっぱいになる。

今作も「いまどきソレ!?」とツッコミをせざるを得ない様な時代錯誤と言ってもいいドタバタギャグが全編に炸裂し、かと言ってそれが古臭いわけでもなくちゃんと現代的にブラッシュアップされ洗練されたギャグとして成立している点も素晴らしい。特にライアン・ゴスリングの一連のくっだらないギャグ(探偵の定番であるガラスを割って忍び込もうとするのにアレとかw)の連続は単純に大笑いさせてくれるクオリティの高いものばかり。なぜトイレでズボンを上げられないだけでアレだけ笑わせるのか。ドアの閉まってくるのにキレるライアン・ゴスリングがなぜああも面白いのか。

まるまると太ってクマのようになったラッセル・クロウもまた素晴らしい。笑うとチャーミングだが基本的には恐い顔面。そして、ライアン・ゴスリングの娘との「擬似親子」的な関係性もシェーン・ブラックならではの描かれ方でアレコレと幅広いマージンを感じさせて感動的だ。

間違っても歴史に残るような大傑作とは言えないが、シェーン・ブラックはそもそも元々そういう志向ではないので、シェーン・ブラックのファンとしてそのまま素直に楽しむ事がこのドタバタコメディの正しい楽しみ方ではないだろうか。

しっかし、冒頭のくだりはとにかく最高だったなあ。

【ブルーレイ/字幕版/ホームシアターにて鑑賞】

若きシェーン・ブラックが手がけた出世作。このタイトルを思いついただけで勝ったも同然。

日本ではDVDにすらならないフレッド・デッカーの快作。

「行き過ぎたハードボイルド」の頂点とも言うべき傑作。大人びた娘が物語に大きく絡んでくる作劇も今作から始まる。

1983年夏。『ジュラシック・パーク』と争って爆死したジョン・マクティアナンとシュワルツェネッガーのアクション大作。シェーン・ブラックの「ラスト」二部作とでもいうべき作品で、今作では「こども」がメインモチーフとなり、全編がアクション映画のパロディのような楽しい作品になっている。ところが、後半では「現実世界」の辛さも描かれていたりして、ブロックバスタームービーとしては上手く機能していないながらも、一筋縄ではいかない味わい深さがある傑作。

大作での失敗にこりたシェーン・ブラックが、本来の持ち味である「行き過ぎたハードボイルド」モノに戻ってきた珍作。珍しく女性が主人公という点もポイント。まあ、結局やっていることは変わらないというアタリもコンプライアンス的に正しい。

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