【映画再見レビュー】『大地震』(テレビ吹替版収録DVD)パニック映画ブームを代表する大味な一本

『大地震』(Earthquake)★★

先日『タワーリング・インフェルノ』の日本語吹替音声追加収録版を丸一日かけて堪能して以来、すっかり「パニック映画欠乏症」に陥ってしまい、日がな一日「それっぽい作品」を観たくてたまらない日々です。

というわけで、『タワーリング・インフェルノ』と同時期に製作され、音楽も同じくジョン・ウィリアムズという、ある意味【パニック映画】を代表する作品として語られるのが今回レビューする『大地震』です。

日本版ポスターのタイトル・ロゴそのものが地震で崩れているという、キービジュアルぐらいは目にしたことがあると思います。現代ではすっかり見られなくなった「盛りに盛った」ポスタービジュアルが実に70年代感満点でこたえられません。

本来ならブルーレイを購入するのが21世紀の世の中に、何故あえてDVDなんぞをチョイスしたのかと? それは、記事の頭に表示されている通り、公開当時のキービジュアルをジャケットに採用した「懐かしの吹替シリーズ」だったからです。

では、ブルーレイはどうなのかといいますと。

お分かりいただけましたでしょうか。

こんなジャケットで購入する意欲が湧くでしょうか?

くわえて、今回購入したDVDには特典として筆者がテレビ放送を録画して何度も観ていた吹替版音源を使用した特典ディスクが「そのまま」ついているのです(ブルーレイには収録されていません)。

しかも、このシリーズのすごいところは、本来なら本編のディスクに「吹替音声」を収録すればいいものを、放送当時の映像もそのまま使っているということです。なので、カットされた箇所もそのままカットされていますし、画面もTVサイズ(4:3)にトリミングされた状態です。もちろんCM時のタイトルスーパーなどは入っていませんが、不自然なフェードアウトなどはそのまま。

「思い出」をそのまま再現したいという懐古主義者(わたしがまさにそう)のような人間向けの商品というわけです。

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実に大味な作品ですが、観るべき部分も多い

さて、本編を早速鑑賞しましたが、まあこれが退屈極まるといいますかw

いや、何度も過去に観ていたのである程度は分かっていたのですが、近年再見した『エアポート75』や『大空港』などが「けっこう面白かった」ものですから、つい期待してしまったんですね。

当たり前ですが、作品それぞれのクオリティが均一なわけはないのです。

とはいえ、マットペインティングやミニチュア撮影といった、【パニック映画】に無くてはならない「特撮技術」の部分は観るものが多く、なにより曲がりなりにも大作なのでそれなりの予算がかけられているのが分かります。

ところが、これらの成果が味わえるのは「ノートリミング版」のみということがまた驚かされました。テレビ吹替版の特典ディスクを観終わったあとに、折角だから(失礼)と本編のディスクも再生してみたところ、やはりシネマスコープで撮影されている映画なだけに、トリミング版とは打って変わって「まとも」に見えるw

そして、先のマットペインティングやミニチュア特撮などもノートリミングのシネスコサイズでないとまったく効果を発揮できていないということがよくわかりました。

例えば、トリミング版では、ビルが倒壊していくミニチュア特撮としか分からないカットでも、ノートリミングで観ると、フレーム右端(トリミングされていた部分)に「壊れたビルのセットから人が次々と落ちていくライブ映像」が合成されているのです。

最近「ノートリミング」で観直すことで、文字通り「見直した」作品は数多く、『大空港』『エアポート75』『エアポート77』などは俄然再評価の機運が個人的に高まっていたのですが、残念ながら『大地震』は「やっぱりこんなもんか」という感じでした。

もっとも、それだからこそ【70年代のパニック映画】らしい大作なんだよなあという、妙な安心感を得られたのも確かで、嫌いにはなれない作品です。

70年代パニック映画ブームを巻き起こした傑作。オールスターキャスト、ワンシチュエーション、日にちをまたがない、ジョージ・ケネディ、超盛り上がるテーマミュージック、すべてがここから始まったと断言できます。

今回の『大地震』の予算とキャストを使ったバーターのような企画だったそうですが、蓋を開けてみれば「エアポートシリーズ」をその後生み出すことになる傑作に。【泣き喚かずに困難に立ち向かう女性主人公】の嚆矢とも言えるカレン・ブラック演じるヒロインが素晴らしい。

言わずと知れた【パニック映画】の古典的名作。「津波を受けて上下逆さまになった豪華客船」という舞台のアイデアだけでも100万点クラスなのにも関わらず、それぞれのキャラクター造形や演じるキャストの名演、神話をモチーフにしたプロット、ジョン・ウィリアムズの音楽などなど、今観てもまったく古びることのない名作。

【パニック映画】の金字塔。結果的にこの作品を超える【パニック映画】は未だに作られていない。

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