『パワーレンジャー』(Saban’s Power Rangers)★★

クライマックスのスーパー戦隊感とアメリカのローカルヒーロー物感の融合はスケールが大きんだか小さいんだか分からない、パイロット版特有の珍妙な味わいを生み出している。
最初にお断りしておきますと、筆者のスーパー戦隊コンフーは『電子戦隊デンジマン』止まりです。そして、アメリカの『パワーレンジャー』に関しても、存在だけは認知しながらも映像や細かい情報などは今回の映画を観るまでまったく知りませんでした。
なので、いきなり恐竜絶滅のくだりからはじまったり、地面を這いつくばるブライアン・クランストンを延々地べたを舐めるようなカメラワークでとらえたり、「スケールが大きんだか小さいんだか」よく分からない展開に面食らわされました。そして、現代に時間が移ってからも、『ブレックファスト・クラブ』もかくやというアメリカ丸出しのティーンエージャームービー的展開に衝撃を受けることに。
わたしの記憶にある戦隊モノは、たいていオトナ(設定上は青年かもしれませんが)の男女が唐突に組織に選ばれるか何かして、敵の組織と戦うというのがパターンだったと思うだけに、まさかの「学園物」として展開するストーリーと、先述の「スケールの大きさが明らかに不釣り合い」なローカル感丸出しのヒーロー物が融合した作風に驚かされた次第です。
「子どもたち(可能であれば小学生レベルが好ましいのですが)が大きな状況に巻き込まれ、否応なく活躍することを余儀なくされる」展開が三度の飯より好きな人間なので、「これは楽しい!」と単純にワクワクして観ることに。
そもそも、5人の男女がスーパーパワーを簡単に得ているのに、さあそれでいざ戦おうとはならないところが素敵で、そもそも高校生の5人が「一致団結して戦う」ことに焦点が当てられているのも好ましい。
なので、クライマックスに至るまで、5人があの「スーツ姿」に変身しないんですよね。これもなかなか現代では勇気のあるシナリオで、そもそも敵の存在も彼らは認知せぬまま「クラブ活動」のように日々特訓を受け続け、挙句には「やってられねえよ」とばかりに瓦解寸前に。まさに「青春映画」的な構造を持ったシナリオをそのままやっているんです。逆に言えば、スーパー戦隊(パワーレンジャー)としての活躍をクライマックスまで全く見せないという、今時あり得ないのんびりとした映画に仕上がっています。
実際途中途中で結構ダレてしまいますし、キャラの立たせ方もそれほど面白くもないわけで、スーパー戦隊物としてはどうなんだろうと思わなくもないのですが、逆に最近流行りの「リアル志向」にありがちな薄暗い展開になるわけでもなく、至極健全な「友情」によって覚醒する持って生き方などは素直に楽しむことが出来ます。
結果として、いよいよ「変身」を経て、恐竜型マシーンを操っての大暴れに胸のすく気持ちよさが。
挙句にちゃんと「巨大ロボ」に合体しての大立ち回りまでしてくれるのですから、このサービス精神には敬意を表するしかありません。
とはいえ、向こうでも当然対象年齢が11歳程度に設定されているだけに(なので、主人公たちがティーンエージャーなのもオトナとほぼ同義なんでしょうね)、「アクション映画」としてみるとイマイチ踏み込みが浅く、「子供だまし」の域を脱していないのは残念ではあります。
そもそも11歳程度の子どもたちが観たら、退屈極まる映画なんじゃないかなと余計な不安もあったり。だいたい124分なんて長すぎるだろうに……
そもそも、5人揃って登場したら、一人ひとり名乗りを上げるのが一番の燃えポイントだと思っていただけに、それがまったくないあたりに、
「彼の国は……」
と嘆きたくもなろうというものですよ。