【2016年映画年間ベスト】ウマデミー賞【脚本部門】発表!

新年明けましておめでとうございます。

例年なら年間ベストを発表しており、10本ぐらいを選出しているのですが、今回改めてブログを引っ越しをしたのもあってちょっと趣を変えてアメリカのアカデミー賞的な感じにしてみようかなと。

題して

《ウマデミー賞2016》

小学生のようなネーミングですが、あんまり深く考えても面倒なのでw

とまれ、まずは2016年にわたくしことビューティー・デヴァイセスが映画館で観た初見映画をノミネート作品として発表します。

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2016年映画館初見映画一覧

ブリッジ・オブ・スパイ
イット・フォローズ
白鯨との闘い
ザ・ウォーク
残穢(ざんえ)―住んではいけない部屋―
オデッセイ
キャロル
ガールズ・アンド・パンツァー劇場版
スティーブ・ジョブズ
ストレイト・アウタ・コンプトン
SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁
クーパー家の晩餐会
ヘイトフル・エイト
ザ・ブリザード
マネー・ショート 華麗なる大逆転
リリーのすべて
ちはやふる -上の句-
バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生
ルーム
ボーダーライン
COP CAR/コップ・カー
スポットライト 世紀のスクープ
レヴェナント:蘇えりし者
ズートピア
アイアムアヒーロー
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
64-ロクヨン- 前編
ヘイル、シーザー!
殿、利息でござる!
ガルム・ウォーズ
エンド・オブ・キングダム
デッドプール
サウスポー
マネーモンスター
64-ロクヨン- 後編
帰ってきたヒトラー
10 クローバーフィールド・レーン
貞子vs伽椰子
機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY
ブルックリン
ウォークラフト
インデペンデンス・デイ:リサージェンス
シング・ストリート 未来へのうた
死霊館 エンフィールド事件
ファインディング・ドリー
ロスト・バケーション
シン・ゴジラ
X-MEN:アポカリプス
ペット
ゴーストバスターズ
君の名は。
グランド・イリュージョン 見破られたトリック
スーサイド・スクワッド
怒り
ハドソン川の奇跡
ジェイソン・ボーン
何者
スター・トレック BEYOND
インフェルノ
湯を沸かすほどの熱い愛
この世界の片隅に
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
ドント・ブリーズ

合計63本

毎年記憶の漏れや調べたサイトの漏れなどで何本か抜けていたりするんですが、とりあえずこの一覧で間違いはないと思います。

で、いつもならここから気に入った作品を上位10本ぐらい選んでベスト10とかにしていたわけですが、今回は各種賞を選んでちょいと変化をつけようという感じですね。

各種賞や発表順もアメリカのアカデミー賞を参考に(興味のない賞や選ぶほど観ていない賞は当然はぶく方向でw)。

では、まずは

【脚本賞】

(脚本賞はオリジナル脚本賞ということになっていますね)

ノミネート作品は以下の通り!

『COP CAR/コップ・カー』

ジョン・ワッツ/クリストファー・ロッド

『ズートピア』

ジャレッド・ブッシュ/フィル・ジョンストン

『ヘイル、シーザー!』

ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン

『シン・ゴジラ』

庵野秀明

『10 クローバーフィールド・レーン』

マット・ストゥーケン/ジョシュ・キャンベル/デミアン・チャゼル

『湯を沸かすほどの熱い愛』

中野量太

『君の名は。』

新海誠

『ドント・ブリーズ』

フェデ・アルバレス/ロド・サヤゲス

寸評

いきなり大量にノミネートされていますが、本家とは違ってあくまでもわたくしの好き勝手にやれる賞なのでw 脚本の優劣というのもこれまた相当難しい次元の話になってしまいますが、そこはあまり深く考えずw オリジナル脚本に対しての賞ということになっていますので、逆に言えば「原作がない」というわけです。なので「いいお話だった」というものをノミネート基準にしてみました。とは言え『コップ・カー』のように「一行プロットは素晴らしいけど、それを超えられていない。でも、ケヴィン・ベーコンが執拗に執拗に車の鍵を開けようと悪戦苦闘するシーンがあまりにも素晴らしい」というような観点で選んでいるものもありますし、ましてや『10クローバーフィールド・レーン』のように、「続編のように見せかけて実は……的なアイデアや、シチュエーションサスペンスにしたアイデアなども素晴らしいのに、なんと”ジョン・グッドマンが髭を剃るだけで戦慄”」というものもあったりして、我ながら選別基準にむちゃがあるような気もします。あるいは『君の名は。』なんかは前作までだと新海誠監督のビジュアリストとしての側面が強調されがちでしたが、今作では東宝側の要望やジャッジをきちんととりまとめて作品に仕上げた手腕や、時系列の崩し方などに個人的に喜んだ口だったりします。そしてまさかオリジナル脚本だとは思いもしなかった(小説も出ていますがあれは日本では珍しいノベライズです)『湯を沸かすほどの熱い愛』なんかはちょっとでも外すと「毎度おなじみ邦画のお涙頂戴路線」になる危険性がてんこ盛りのパーツで構成しておきながら『ザ・ウォーク』の綱渡り並の精密さで渡りきった傑作でした。しかも、情の部分を支える緻密な「技巧」の部分でも大変優れていました。わたしなんかは逆に感心しすぎて泣くのも忘れるという感じでしたしね。『ズートピア』はディズニーが「集団作業による作劇」の見本のように見せかけて、実は極めて挑戦的な題材を毎度のことながら見事にまとめているあたりを評価しているんですが、実際のところ、まあ単純にフラッシュが面白すぎました。一つのネタをアレだけ長時間引っ張りながら、しかもその長時間をずっと観客が笑いっぱなしというのも前例がありませんし、なおかつ再度観てもずっと笑ってしまうという恐怖すら感じる面白さでした。『ヘイル、シーザー!』はコーエン兄弟が思いっきり肩の力を抜いて「別に賞レースに参加したくて映画撮ってるんじゃないんだ」という明確な意思表示とも受け取れる快作でしたね。これにしてもイギリスから渡米した監督がカウボーイ役者に散々振り回されて手を焼かされるというネタが面白すぎます。

というわけでいよいよ【脚本賞】の発表です!(長いなw)

デレデレデレデレ

ウマデミー・ゴーズ・トゥー………

庵野秀明!

『シン・ゴジラ』!!

『カリオストロの城』の時に宮﨑駿が「棚浚え」という言葉を使っていましたが、この作品でも庵野秀明は手持ちの札をすべて投入して勝負ていまして、わたしはそれに極度な感動を覚えたんですね。言ってみれば『ゴジラ』って完全に東宝の財産じゃないですか。庵野秀明のオリジナルではまったくないわけですよ。謂わば「雇われ監督」として登用されたわけです。それなのにあそこまで全身全霊といいますか、言葉を悪くすれば「恥も衒いもなく」勝負に出たその根性がたまりませんでしたね。言うまでもなく全体的には『エヴァンゲリオン』の傑作エピソード『決戦第3新東京市』のリメイクに近い作りになっているわけですが、それを抜きにしても「ゴジラ=恐怖の権化」という『初代ゴジラ』の持つ唯一無二の肝の部分に肉薄したという意味でもあのシナリオを書いた意義は大きいとわたしは思います。スピルバーグが『宇宙戦争』で唯一成功したその次元にちゃんと本家シリーズが到達したという事実は日本の大きな財産として世界に誇れるんじゃないでしょうか。

では続いて

【脚色賞】

こちらは「原作のある脚本」というくくりですね。

ノミネート作品はこちら

『オデッセイ』

原作アンディー・ウィアー『火星の人』/脚色ドリュー・ゴダード

『スティーブ・ジョブズ』

原作ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズ』/脚色アーロン・ソーキン

『アイアムアヒーロー』

原作花沢健吾『アイアムアヒーロー』/脚色野木亜紀子

『ハドソン川の奇跡』

原作チェスリー・サレンバーガー『機長、究極の決断 『ハドソン川』の奇跡』/脚色トッド・コマーニキ

寸評

こちらの基準としては「原作がアレだけ面白いんだからそのままやっても面白くなるだろうし……ええ!!」という感じです。『ハドソン川の奇跡』は原作は読んでいないんですが、事故の顛末などに関しては知っていましたので。要するに「2分ちょっとの顛末」をどうやってクライマックスに落とし込むんだろうという懸案を、あんなアクロバティックな作劇でクリアして、なおかつ全観客の心がフワっとひとつになるような「シメのセリフ」があるだけでも最高でしたよ。そして、2016年は脚本家野木亜紀子の年としても記憶されることになるであろう一年でした。テレビドラマ『重版出来!』映画『アイアムアヒーロー』そして言わずと知れたテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』個人的には2015年のドラマでしたが2016年初頭に観てしまった『掟上今日子の備忘録』にハマリまくってしまい、結果的に同じく新垣結衣さんとのコンビになる『空飛ぶ広報室』まで観てしまいました。野木さんはまさに「脚色」に関してずば抜けたセンスを発揮しているようで、すべて原作付きの作品でありながら、どれもドラマ化(映画化)に対してのトランスレーションが見事に上手く言っているように思います(原作を読んでいない作品もあるので読んでいる作品に関してですが)。加えて、「コミックの映画化(ドラマ化)」という意味でも特筆すべき活躍だったのではないでしょうか。そんなラインナップの中で言えばコミック原作の映画化という意味では違和感のない『アイアムアヒーロー』ですが、実は他の作品群と違ってこちらはジャンルが完全に「ホラー」しかも「ゾンビ」なんですね。これをまあモノの見事に素晴らしく「映画」に落とし込んでおりまして。日本で生まれた恐らく初の「まとまなゾンビ映画」としても記憶される映画ですが、ここでの野木亜紀子さんのワークはブッチギリの貢献度だったと思います。よくぞあそこまで序盤をネバったもんだと。

豊作揃いの2016年の前半戦を大きくかっさらったという印象だった『オデッセイ』わたしは珍しく原作を先に読了しており、しかもこれまた珍しく一日で一気に読んでしまったほどの面白さでした。なので、監督がリドリー・スコットと聞いて「あ、まあいいんじゃない」という期待はほとんどしない感じでした。ところが脚色がドリュー・ゴダードと知って俄然期待が高まりました。何と言っても傑作『クローバーフィールド』『キャビン・イン・ザ・ウッズ』を書いている人ですからね。それに前年にはTVシリーズで『デアデビル』という傑作もモノにしていました。そして、公開されるや「え! リドリー・スコットなのに!?」という極上の評判が次々とw それでも「そりゃ、あの原作だから普通に余計な事していなければ面白いにきまっている」とナメてかかっていました。そうしたら、「余計なことをしていない」だけではなく、イチイチうまい具合の「脚色」をキメてくれていたんですよねえ。リドリー・スコットもそれに応えるように「余計なことをせず」自分の持ち味であるビジュアリストに徹して名脚本をそのまま映画に落とし込んでいてくれました。あれだけ切れ味のいい原作の幕切れにあえて足した映画オリジナルのラストもこれまた納得のいく素晴らしいものですし、何より「地球に待っている恋人や家族を描かない」という原作の美点を尊重し、恐らく改変を要求されたであろう圧力に負けず「余計なことをしなかった」ドリュー・ゴダードの業績に敬意を表したいです。

というわけでいよいよ【脚色賞】の発表です!

デレデレデレデレ

ウマデミー・ゴーズ・トゥー………

アーロン・ソーキン!!!!

『スティーブ・ジョブズ』!!!

実在の人物(しかも超がつくほどの有名人!)を題材にして、しかもたった2年前にも同様の作品が作られているという雁字搦めの中、『ザ・デプス』『リバイアサン』なんかがあってもオレの映画には全く関係がないとばかりに横綱相撲をキメた『アビス』のキャメロンのように、王様はただ一人と言わんばかりの圧倒的な脚本を書き上げたアーロン・ソーキン。殆ど年初に近いあたりに観たにも関わらず、2016年が終わってみてもやはり「一本勝ち」としか言いようのない脚本だったと思います。個人的にはアーロン・ソーキンの仕事は常に「憧れ」であり「惚れ惚れ」する物ばかりで、わたしの中では橋本忍レベルの凄さを感じていますし、ベートーヴェンなどと並べてもまったく引けを取らない美しさと完成度だと思っています。そんなアーロン・ソーキンの仕事のある意味到達点とも言うべき作品が今回の『スティーブ・ジョブズ』だったんではないでしょうか。当初の監督は『ソーシャルネットワーク』でコンビを組んだデビッド・フィンチャーだったわけですが、結果的にダニー・ボイルになったのはよかったのかもしれません。フィンチャーだと良かれ悪しかれ彼のカラーが色濃く出てしまいますが、ダニー・ボイルはあくまでも脚本に準ずる方向性で作品を作っていたように感じます。上映時間内のほとんどで、役者たちがセリフを叩きつけ合う拳を使わないボクシング映画のような作品ですが、第一ラウンドから最終ラウンドまでありとあらゆるバリエーションで観客を飽きさせず、最終的には観客をメタ的に飲み込んで繰り広げられるデスマッチの様相を呈する展開には手に汗握らされてばかりでした。そのくせ油断なく情感あふれるエレメントを違和感なく滑り込ませてくる当たり、まったく開いた口が塞がらないような見事さでした。観終わったあとは顔面ボゴボゴのノックダウン状態になる映画です。

というわけで長くなりましたので、続きます。

次は【演技部門】です! 乞うご期待!!

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