アニメイッキ見特集第一弾『SHIROBAKO』★★★1/2「変な話、油断も隙もない傑作。観る人は選ぶが、観れば間違いなく面白い」

『SHIROBAKO』★★★1/2

「今時の絵だから」「2クールもあって長そう」「アニメ業界ネタなんて内輪受けでしょう?」はい。分かります。わたしもそう思っていました。了解です。んが! それが全部面白いんです!!! 信じて!!

やるべきことがあるのにそれを先延ばしにしようとすると、人間結構時間が作れてしまうものなのです。そんな時間をどうやって有効利用するか?

それはもう「海外ドラマかTVアニメのイッキ見」しかないでしょうがあ!!

というわけで、先日から「現実逃避」という名目のもと、TVアニメのイッキ見にハマっております。十何年か前には海外ドラマ『ER』を当時最新の第7シーズンまで一気観したことがあり、それはもう至福の時間でした。そう、「イッキ見」には、マラソン完走同様(いや、マラソンやったことありませんが)の達成感に加えて、連載漫画を一気読みした時と同様の「濃厚なドラマ」が楽しめるという喜びがあります。

もちろんそれは「面白い」ものに当たればですがw

毎期毎期何十本も放送される現在のTVアニメ市場。一応毎度毎度一話目だけはできるだけ観るようにしていますが、前期の『けものフレンズ』でも大多数の方々同様「一話目の途中で切った」口なので、もう自分の目なんか信じられるわけがありません。過去にも幾つか継続視聴して最後まで観た作品はありましたが、大抵はあとからTwitterでの盛り上がりを耳にして、改めてDVDをレンタルしたり再放送を録画したりして「イッキ見」するのが通常のスタンスです。

この「イッキ見」ですが、例えばTVアニメの1クールが「12話ないし13話」なので、一話22分で計算するとだいたい「264分または286分=4時間半または5時間」ほどあれば全部観られる計算になります。実は映画を三本観たりするのと大した差はなかったりします。長い映画だったら2本観るのと同じぐらい。

なので、実はその気になれば「長編を楽しむ」という気持ちでイッキ見できちゃうんですよね。で、2クールだったりすると、「2日楽しめる」という感じでw

というわけで本題です。

Twitterでフォローしている方からおすすめされた今回の『SHIROBAKO』。わたしも一応放送当時話題になっていることは知っており、いつか年末年始に一挙放送されたものをHDDに録画していたりもしたんですよね。ただまあ、こういうのは何かのキッカケがないの観ないものなんですよ。それが、今回Amazonプライムに登録されたということで、イッキ見してみました!

この作品は2クールなんですが、ちょうど本編が1クールずつの二部構成になっておりましたので、2日にかけて観てみました。

あらすじは「高校生の時にアニメを一緒に作っていた5人の女の子が、それぞれ大人になってから各々の夢に向かって頑張っていく」というもの。主人公がアニメ製作会社の「制作担当」というのがいきなりリアリティ満点の設定で、いわゆる「萌えアニメ」系や「異世界系」などというジャンルではなく、HPによれば「働く女の子シリーズ第二弾」ということになるようです。

これがまあ、そのものズバリの「仕事」が完全にテーマになっていまして、「ドリーミー」な味付けはほんのちょっぴり。その中身は延々と「アニメ制作の裏側」をネチネチと描いていくんですよ。わたしはこういう「ネチネチと描写を積み重ねていく」演出やプロットが三度の飯より好きなものですから、「こ、これは!」と。1話めからずううううううっと、ひたすら「アニメ制作に関するエピソード」が続くんですよ。もちろん誇張や汚い部分はできるだけ省いているんでしょうが、とことん「ありそう!」という感じで。しかも、面白いのは「仕事をしている人なら全員共感できるでしょう」というおためごかしは少なめでw 「アニメ制作」という特殊な職場環境を、そのまま描くというアプローチなんです。これはいわゆる伊丹十三が切り開き、周防正行が完成させた「マイナージャンル系」作品と同じアプローチなんですよね。これをそれこそアニメでやってしまうあたりの面白さといいますかチャレンジングさ。一歩間違えば「内輪受けでしょ?」となるあたりを、あたりまえのように「内輪受け」だらけで描きながらもちゃんと面白く仕上げているというのは、やはりベテラン脚本家の横手美智子さんや吉田玲子さんによる手腕ですよね。

そして、監督の水島努氏。泣く子も黙る『ガールズ&パンツァー』などの超売れっ子さんですよ。ギャグがいちいち面白いのも素晴らしいんですが、泣かせどころの演出や、盛り上げどころの演出が実に上手い! クライマックスなんて大号泣でしたよ。あの「泣き芝居」!! やられました。

完全に別のアニメのキャラとして思えないのに、共存している異常さ。

この作品の特筆すべきポイントとしてキャラクターデザインがあります。ヒロインたちや女性キャラは(それほど極端ではないにしろ)いわゆる最近のアニメっぽいキャラデザインなんですが、それにたいして登場する男性キャラが、もう笑ってしまうぐらい「リアル路線」www あのキャラクターデザインのミックスアップぶりは強烈で、しかも、なんの違和感もなく共存しているのがすごいんです。それこそ『ガールズ&パンツァー』で、萌えキャラとリアルな戦車を共存させているのと同じ方法論なんだと思います。結局キャラクターも含めてすべての「作品」は記号を脳内で再構成して味わう訳で、日本人特有の「口内調味」と同じように、こういった特殊な食べ合わせの料理も難なく味わえてしまうんでしょうね。これもチャレンジングでした。それにしても木下監督の「デブ」ぶりのリアリティたるやww CVの檜山修之さんの好演も相まって、愛すべきとしか言いようのないキャラになっていました。

このキャラ声まで異様に似ていて、もう本人なんじゃないのかと思うほどでしたw

当然名前を変えているとは言え、明らかに元ネタが明らかな(隠す気もないw)実在のアニメ関係者が次々とレジェンドのように登場するのも、アニメファンとしてはこたえられない。これも内輪受けになりつつ、ちゃんとエンターテイメントとして盛り上がるように作られているのがお見事。特に庵野秀明が登場するくだりは失禁モノ。あるいはわたしの世代からみても「昔の伝説」的なアニメーション制作のエピソードも描かれたりして胸熱必至。「アニメ」って基本的に子供の頃に観るもんですから、それぞれの黄金記憶に直結しているんですよねえ。マジで素敵な商売だと思いますよ。

映画とかいっぱい観て頭でっかちになっていると、ついついTVアニメは先入観が邪魔をして重い腰を上げられないものなんですが、やはり話題になる作品は話題になるだけの面白さを持っているものなんですよね。

全話延々面白い作品なので、すっかり定着してきた「見放題配信」でイッキ見するのにうってつけです!

【全24話528分/水島努監督/横手美智子シリーズ構成/P.A.WORKS制作】(Amazonプライムみて鑑賞)

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